会長挨拶

F.ナイチンゲールは,看護について「病気の看護ではない.病人の看護である」と述べました.そこで看護は対象者その人の考え方や価値観を尊重してその人らしい生活を援助することを重視してきました.

人は生まれてから十数年間,一人では自立した生活ができないため育ててくれる人を必要とします.養育する人は,それまでに身に着けたその人の考え方や価値観,生活の仕方で養育をします.そして子どもは養育者からその地域で生活していく方法を“まね”て取り入れ,身に着けて成長します.よって看護の対象者の考え方や価値観,生活の仕方は生まれ育った環境である文化の影響を受けています.

また看護は対象者の個別性を重視しています.いや対象者の個別性を考慮しないと‟看護にならない”のです.その人の考え方や価値観,生活の仕方は個別性です.従って看護をするには対象者の文化の背景を踏まえていなければなりません.このことに気づいたM.レイニンガーは文化ケア理論を提唱しました.

文化を反映した看護方法の研究開発を目指して設立された文化看護学会の設立メンバーである岩崎は以下の主旨を述べています.わが国の看護学の多くは英米で生み出された理論や実践を基礎にしたものである.ところが看護を受ける患者さんには地域性や生育歴など,それぞれ異なる文化背景がある.医療の世界がグローバルを志向したとしても,サービスを受ける患者さんにはローカルな,それぞれ異なった世界がある.従って看護においては,問題解決型のアプローチやEvidence Basedの考え方などに加えて,個々の患者さんの文化背景への配慮が重要になる.地域性や日本独自の文化に根差した看護学があってもよい(精神科看護,37(12),48-49,2010).

文化を踏まえた看護にはアメリカのような多民族国家やグローバル化の進展によって海外から来て滞在または帰化した外国人の異文化看護があります.あるいは国際協力援助として外国に渡航して看護するような国際看護があります.しかし,それだけではありません.同じ国内,同じ民族においても地域によってその文化は異なるのです.

第12回岩手看護学会学術集会では大会テーマを「地域文化を踏まえた看護を考える」としました.会長講演では地域文化を踏まえた看護とはどういうことかとその意義と必要性について,そして特別講演では日本文化を基盤に置いた看護について,シンポジウムでは日本における地域文化を踏まえた実践と研究について考える場としたいと思います.

本学術集会が活発な討論の場となりますよう,皆様のご参加をお待ちしております.

第12回岩手看護学会学術集会
会長  平野 昭彦
(岩手県立大学看護学部 教授)

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