会長挨拶
第19回岩手看護学会学術集会
会長 遠藤 太
(岩手医科大学看護学部)
近年の看護実践の現場では、効率や迅速な判断、成果の可視化が求められる一方で、私たちが本来大切にしてきた「人と人との対話」が、いつの間にか後景に退きつつあります。しかし、看護の本質は、目の前のその人を深く理解しようとする営みすなわち対話の中にこそあります。ケアは一方的に提供されるものではなく、語り、聴き、応答する相互作用のなかで、少しずつ立ち上がり、形づくられていくものです。
そこで第19回岩手看護学会学術集会のテーマを、「対話が拓くケアの未来 ― ゆるふ対話による共創 ―」といたしました。このテーマには、「対話を、ケアを生み出す力として、あらためて中心に据え直したい」という願いを込めています。
ここでいう「ゆるふ対話」とは、張り詰めた関係をゆるめ、ほどきながら、相手を受け入れていく関わりです。評価や結論を急がず、互いの思いや経験にやわらかく耳を澄ませる―そのような姿勢を指します。「ゆるふ」には「緊張を解く」「関係をほどく」に加え、「許す」「受け入れる」という深い意味が重なっています。意味や関係を固定しすぎず、余白を残すことで、新しい理解や関係性が生まれていく。私たちはその“生成的な姿勢”を、「ゆるふ」という言葉に託しました。
そして、そのゆるやかな対話の場から立ち上がってくるものが「共創(Co-creation)」です。看護の現場には、患者・家族・地域・多職種など、多様な声があります。それらの違いを対立として閉じるのではなく、響き合いとして受けとめ、そこから新しい意味や実践知をともに紡ぎ出していく―そのプロセスこそが共創です。
本学術集会が、臨床・教育・研究・地域のさまざまな実践を持ち寄り、対話を通して看護の原点を確かめながら、未来へ向けた希望と可能性を見いだす場となることを願っております。
企画委員一同、実りある学術集会となるよう、心を尽くして準備を進めてまいります。皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げます。