コラムリレー~「理事長としての抱負」
今年度より、岩手看護学会理事長に就任いたしました、岡田みずほと申します。岩手県の豊かな自然と、温かく迎えてくださる地域の皆様に支えられ、岩手県立大学での勤務も4年目を迎えました。
県内の看護人材確保は、他の地域と同様に厳しい状況にあります。とりわけ、地域の特性を踏まえて課題を把握し、解決へ導く力をもった人材を育成することは、これからの岩手県にとって喫緊の課題です。
医療・介護・福祉が連携し、より良いケアを提供していくためには、課題解決のプロセスや成果を多くの方々と共有し、議論を深めることが欠かせません。岩手看護学会は、そうした対話と学びの場です。研修会のみならず、学会を通じて多職種・多世代の交流が生まれ、地域に根ざした実践知が育まれることを期待しています。
本学会では、毎年の学術集会発表演題および3年に一度、学会誌投稿演題から優秀演題を表彰する「岩手看護学会AWARD」を設けています。実践や研究の成果を発表し、仲間と共有することで、県全体の看護の質が高まり、次の挑戦への原動力となります。ぜひ積極的にご参加ください。
研究紹介:看護の可視化と記録方式の開発
私の専門は看護管理学と看護情報学です。特に、データやICTを活用して看護職の生産性を高める取り組みをライフワークとして進めてきました。
臨床現場では、委員会活動としてクリニカルパスの電子化を推進し、院内用語の標準化、ケアの可視化と標準化、データ分析、運用ルールの策定に携わりました。その後、医療情報部専従看護師として8年間勤務し、電子カルテ構築や業務分析を担当しました。
その過程で、従来の看護記録は「実施したケアの記録」にとどまり、患者が望む生活像や退院後の目標が十分に反映されていない課題が明らかになりました。そこで、長崎大学病院版患者参画型看護記録方式を開発しました。この方式は、単なる様式の変更ではなく、患者と看護師がともに「退院後のありたい姿」を明確にし、それを起点として計画を立案する目標達成志向型記録です。
この取り組みにより、看護計画立案にかかる時間が1患者あたり約40分短縮され、記録内容が整理されました。さらに、チームで患者の目指すゴールを共有することでケアの一貫性が高まり、スタッフからは「患者と一緒にゴールを見据えてケアできるようになった」という声が聞かれています。
現在は、この時の経験をもとに、日常業務で生成される電子データを活用した低負荷・低侵襲のタイムスタディ手法を開発中です。ログ解析により、スタッフ間の業務分担の偏りなどを可視化し、現場の改善サイクルを支援できるシステムを構築しています。
久慈医療圏での地域連携
2022年度からは、久慈医療圏をフィールドに、看護・介護職の連携強化に向けた地域連携ネットワークの活用に取り組んでいます。まず、病院・訪問看護・介護事業所で使用される用語や情報のやり取りの実態を調査し、課題を整理しました。
現在は、看護職・介護職・薬剤師・ケアマネジャー・行政職員などが一堂に会する意見交換会を定期的に開催し、情報伝達の重複や漏れをなくす方策を検討しています。
おわりに
岩手に来て以来、まさに「水を得た魚」のように活動できているのは、地域の医療・介護・福祉に携わる皆様のご支援をいただけているからだと実感しています。今後も多くの方と協働し、より良いケアを効率的かつ効果的に提供できる仕組みづくりに貢献していきます。岩手看護学会としても、会員の皆さまが挑戦し、成長し、成果を共有できる場をつくり続けます。ぜひ皆さまの実践や研究を学会で発表していただき、ともに地域の看護を前進させていきましょう。
2025/9/20掲載
コラムリレーバックナンバー
- 理事長と看護研究
- 広報委員による研究座談会
- コラムリレー ~受賞者の声①~
- コラムリレー ~受賞者の声②~
- コラムリレー ~はじめての学会発表①~
- コラムリレー ~「優秀演題賞」2023 受賞者の声①~
- コラムリレー ~「優秀演題賞」2023 受賞者の声②~
- コラムリレー ~コラムリレー ~はじめての論文執筆~
- コラムリレー ~「優秀演題賞」2024 受賞者の声①~
- コラムリレー ~「優秀演題賞」2024 受賞者の声②~
- コラムリレー ~「理事長としての抱負」~